
私の周りの里山風景は、秋から冬へと季節が移るにつれ、静かに色を変えていきます。
枯葉が舞い散る頃になると、あちらこちらで俄然、柿色が目立つようになります。
里山の柿色は、ただの季節の彩りではなく、暮らしの中にそっと寄り添う小さな灯りのようなものです。

山柿は、栽培品種に比べると実が小さく、わざわざ収穫して売り物にするようなものではありません。 渋柿を食べるには手間暇がかかり、収穫もひと苦労。 さらに柿を剥き、軒先に吊るして天日干しにする作業も、なかなかの手間です。
だからこそ、せいぜい自分の家で食べる分と、近所へのお裾分け程度。 あとは自然に任せ、鳥たちの冬のごちそうとして残しておくのが、昔からの里山の暮らしでした。
鳥やカラスはその変化をよく知っていて、枝に残された柿の実を、甘みが増す頃を見計らってついばみにやって来ます。 その光景は、秋から冬へ移る里山の、どこかほっとする風物詩でもあります。

ところが今年は、全国的に熊の出没が相次ぎ、ニュースでも大きく取り上げられました。 「柿の実りの偏り」が原因のひとつとして語られ、山の餌が不足した熊が人里へ降りてきたのではないかと言われています。 いつもは静かに季節を知らせてくれる柿の木が、思いがけず社会問題の象徴のように扱われることに、複雑な気持ちになります。
それでも、私の散歩道に立つ枝先の橙色を眺めていると、自然の営みはいつも通り淡々と続いています。 人の暮らしと自然のリズムが、どこかでつながりながら揺れ動いていることを、今年ほど感じた年はありません。
※南三陸は熊の出没確認はありますが、被害は聞いていません。

下の写真は今日の夕方...近くのお客様からの頂き物...お裾分け(吊るし柿)
お店で記念撮影です。

南三陸 入谷鏡石